グローバリズムを利するのは多国籍企業と中国企業だけだ

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トランプ氏の投げかけた反グローバリズムの姿勢は含蓄が深い。
多国籍巨大企業が、米国外に生産拠点を移し、海外の低賃金労働者雇用によるコストダウンで企業利益を増大させて製品の逆輸入を計っても、米国国内の雇用不安と低賃金化を招き、米国市場の購買力の低下につながると云う矛盾がある。この現象は日本で最も典型的に生じている。

自由貿易の推進は、巨大国際企業が規模の優位性と共に自由に低賃金国で生産することによって彼らのみが国際競争力を増大し、他の国内企業を淘汰し席巻するという結果を招いている過ぎない。

彼らは発展途上国で労働者を低賃金で雇うことによって、事実上労働者賃金の上前を撥ね、多国籍企業はその不当な利益をトップマネージメントの支配階層で温存、独占している。その証拠に巨大国際企業の一握りの幹部たちの報酬は年収、数百万ドルまで膨れ上がり、トップの社長の報酬はビリオネアといわれるまでに跳ね上がっている。

他方、労働者の雇用や賃金は、多国籍企業の思うがままに、さらなる低賃金国へ移転するがゆえに、どんどん賃金は下がり、雇用状況は不安定化し、国内ばかりでなく、国際的な格差社会を生むに至っている。

この現象が顕著になったのは90年代初頭のソ連の崩壊による冷戦終結以降、核戦争の恐怖が去り、経済至上主義が跋扈し始めたころからその姿を現した。
この状況にタイミングよく最も恩恵を受けたのは、中国共産党独裁政権である。彼らは数億人の貧しい労働者を雇用し、日本からの技術をODAなどで体得し、さらに優秀な日本の生産機材、製造機械を輸入し、世界に低価格の中国製品を売りまくり、労働者を犠牲にして巨額の利益を共産党員幹部のふところに隠し持った。

この低賃金による低価格製品の攻勢は、先進国たる欧米、日本の労働者への低賃金圧力となり、先進国の中低層の労働者へその苦しみを伝播させた。
中国はさらにその利益で覇権に不可欠な軍事力の増強に力を入れ、近隣諸国を脅かす状況を創出するまでに至っている。

このような事実を見抜けぬ日本政府は、いまだに多国籍企業のみを潤すTPPに固執しているのは、はなはだ滑稽というよりは、木を見て森を見ぬ間抜け為政者そのものである。

国家間の関税をなくし、自由競争時代がそれぞれの国家を繁栄させると云う幻想は、実際は多国籍巨大企業を利するとともに格差社会を拡大させるだけだと云う事実に攪翆しなければならない。
そればかりでなく、多国籍企業による安価な大量生産は、デフレーションの原因となり、中小企業を廃業に追い込み、低賃金国民の増大は消費マインドを冷えさせ、経済の沈滞を招いていることは、現実がこれを証明している。

これからの時代は、それぞれの政府にとってもっとも重要な責務は、それぞれの国民の生活に必要な賃金と雇用を確保し、巨大企業やより裕福な個人中心に税を徴収し、それをいかに国民の福祉と教育分野に公平に再分配するかという事に、最大限配慮する事である。

同時に政府は、国家を超えた存在になりつつある巨大国際企業を如何に適切にコントロールするという事が、最も大事な責務であると自覚することである。
巨大企業献金に惑わされ、巨大企業の尻馬に乗って、ともすれば民族の個性や伝統を破壊するグローバリズムを盲信し過ぎてはならないのだ。

多国籍巨大企業の要求に、適度な歯止めをかけつつ、国家の尊厳を守り、国民の安寧な生活の実現にまい進すべき時であると云う自覚を為政者として今一度心に強く念じてほしい。

次期米国大統領であるトランプ氏に対しては毀誉褒貶が激しいが、この点に関しては、今後の世界経済における国民国家のあり方に一石を投じているのではなかろうか。
ゆでがえる状態の日本政府に猛省を促したい。

平成29日1月12日                   板垣 哲史

 

板垣哲史:国際金融コンサルタント。慶大法学修士、BCI、シティバンク東京支店FXチーフ・ディーラー歴任後、シティコープ・フューチャーズ在日代表を経て、現在(株)日本トーマスモアコンサルティング社代表。 著作に『儲かる米ドル預金』マネジメント社、『眠ったお金を揺り起こせ!』ブロンズ新社、『投資に勝つ最強の「心理」法則』(オーエス出版)、『ライフセトルメント投資入門』アールズ出版2011年監修がある。

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(株)日本トーマスモアコンサルティング


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