最終確認!米大統領選の注目ポイントとシナリオ別投資戦略(2016/10/11)

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小野田慎氏のコラム。株式、為替、コモディティ相場のトレンドや、今後想定されるシナリオと投資戦略。eワラントはもちろん、他の金融商品を使った投資戦術などをお届けします。

最終確認!米大統領選の注目ポイントとシナリオ別投資戦略(2016/10/11)

 今年後半の重大イベントとして注目されているのが11月8日に行われる米国大統領選挙・議会選挙です。選挙戦序盤からクリントン氏が優勢と見られてきましたが、世論調査の動向を見ると支持率は大差になっておらず接戦となる可能性があります。

 そこで今回は米国大統領選の前の最終確認としてクリントン氏とトランプ氏の主張を比較するとともに、同時に行われる議会選挙を踏まえて想定されるシナリオと投資戦略についてまとめました。

■注目は金融機関への規制か?

 クリントン氏とトランプ氏の主張は多岐に亘っていますので、相場への影響が大きそうな経済政策や外交政策に注目すべきでしょう。主要テーマについて過去の発言などから比較表にまとめたのが表1です。

ew-20161011-1

 クリントン氏とトランプ氏が全ての政策で対立しているわけではなく、例えば石油産業に対する連邦税制・補助金については両者とも廃止すべきと主張しており、中国の軍拡の動きについても警戒する向きは同じ方向です。税制面ではトランプ氏が法人税の大幅な引き下げや課税率の引き下げなど、労働者や富裕層の票を狙っているためかちょっと極端とも言える主張をしています。

 また注目したいのは銀行業と証券業の分離を定めたグラス・スティーガル法の復活についてです。クリントン氏の夫のビル・クリントン氏が大統領だった1999年に廃止され、これによって銀行が証券業を兼務することができるようになりました。しかし、2008年の金融危機で金融機関への批判が高まって以降、共和党は同法の復活を求めています。金融機関の規制という面では2010年7月にオバマ政権下で成立したドット・フランク法があります。この法律は政府支援を受ける金融機関がリスクの高い事業を行わないように規制するのが趣旨で、金融機関が自己勘定取引を行うことを原則として禁止するボルカー・ルールも含まれます。ボルカー・ルールは2015年7月21日より適用されていますが、最近の金融機関の収益悪化の原因の一つとも考えられるものです。クリントン氏は金融機関への規制を強化すると主張している一方、トランプ氏はドット・フランク法を見直すと主張しています。

■同時に行われる議会選挙も重要

 大統領選と同時に米国議会選挙も行われます。現在はオバマ大統領が民主党に属するのに対して、上院も下院も共和党が多数派で、いわゆるねじれ状態にあります。ねじれ状態になると議案の進捗が滞るなど政治の停滞を招くことになりますので、議会選挙の結果にも注目です。

 上院の議席数は100、下院の議席数は435です。上院の任期は6年で2年ごとに1/3が改選されます。今回の改選議席は34で、民主党の10議席、共和党の24議席が対象です。仮に改選34議席を民主党と共和党で半分に分けた場合、改選後の上院は民主党が51議席、共和党が47議席となりますが、この場合は民主党は7議席増えることになるので、民主党にとっては楽観的すぎる見通しかもしれません。改選議席数が多い共和党が若干議席を減らすとしても、上院の選挙結果は民主党と共和党の議席数が均衡する可能性が高いと考えられます。

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 一方で下院の任期は2年で全議席が改選されます。大統領選と下院の選挙が同じ年の場合、大統領の属する党が下院でも多数派となる傾向が高く、仮にクリントン氏が勝利となれば下院で民主党が議席を伸ばす可能性があります。しかし、現状の民主党の議席数は共和党より大幅に少ないため、クリントン氏が大差をつけてトランプ氏に勝利しない限り、下院での共和党優勢の状況は変わらないかもしれません。ちなみに上院は大統領の高官任命、条約締結への承認権や大統領に対する弾劾の権限を持っており、下院は予算の先議権を持っています。日本の国会のように衆議院の優越のような制度はなく、上院も下院も平等といえます。

■シナリオと投資戦略

 選挙のシナリオを考える上で、メインシナリオとしては大統領選で優勢と見られているクリントン氏の勝利を軸に3つのシナリオを考えました。上院はどのシナリオでも勢力が均衡するものとしたうえで、シナリオ1はクリントン氏の圧勝によって下院も民主党が多数派となる場合、シナリオ2はクリントン氏が勝利するものの、下院は共和党が多数派のままとなる場合、シナリオ3はトランプ氏が勝利し、下院も共和党が多数派のままとなる場合です。現状、クリントン氏が圧倒的に優位とはいえないため、シナリオ2がメインシナリオです。

シナリオ1 大統領選:クリントン氏勝利、上院:均衡、下院:民主党
民主党が下院でも躍進し、クリントン氏の主張の実現性が高まるシナリオ。

・WTI原油:上昇期待でWTI原油コールの買い。シェール開発規制で原油生産が減り天然ガス生産にシフト。
・米国建設・土木関連株:上昇期待。インフラ投資の拡大が期待。米国における建設工事受注の実績がある三菱重工コールの買い、その仲介役となる商社のコールの買い、重機需要の増加期待でコマツコールの買いなど。
・米国軍事関連株:上昇期待。国務長官時代に中東への積極的な関与を主張。
・石油関連株:下落懸念。原油価格の上昇は追い風だが、優遇政策は受けられなくなる。
・米国製薬株:下落懸念。高額医薬品を批判。日本でも高額な医薬品に対して厚労省が検証対象とする医薬品に小野薬品のオプジーボなどが含まれた。小野薬品プットの買いなど。
・米国金融株:下落懸念。金融機関への規制強化を主張。金融機関の収益が悪化しているなか追い討ちとなる可能性がある。メガバンクのプットの買い。
・日本株全体としては製薬株と金融株の下落懸念と、12月のFOMCにおける利上げが強く意識されて若干の弱含みか。米ドル対円相場は上昇か。日経平均やTOPIXのプットの買い、または、日経平均マイナス3倍トラッカーの買い。

シナリオ2 大統領選:クリントン氏勝利、上院:均衡、下院:共和党
いわゆるねじれが発生。予算の先議権を持つ下院が共和党となることで各種政策の実行性に問題が生じる可能性。短期的に米ドルの下落が発生か。

・WTI原油:ニュートラル。共和党が下院を握ることでエネルギー政策の大転換は難しい。
・米国建設・土木関連株:共和党もインフラ改善は重要視しているので上昇期待。シナリオ1と同様。
・米国軍事関連株:上昇期待。共和党内も一枚岩ではないが、オバマ外交への批判からタカ派が優勢となると思われる。
・石油関連株:ニュートラル。石油企業は共和党の支持母体ゆえクリントン氏と議会が対立。
・米国製薬株:下落懸念。共和党も高額医薬品を批判。シナリオ1と同様。
・米国金融株:ニュートラル。主張が反対のクリントン氏と議会が対立。
・日本株全体としては円高と製薬株の下落懸念と、12月のFOMCにおける利上げが強く意識されて若干の弱含みか。米ドル対相場は一旦円高に向かうも利上げにより戻すと予想。このシナリオでも日経平均やTOPIXのプットの買い、または、日経平均マイナス3倍トラッカーの買い。

シナリオ3 大統領選:トランプ氏勝利、上院:均衡、下院:共和党
可能性は低いシナリオですが、このシナリオが発生すると短期的な相場の急変動を招く可能性が高いと思われます。一旦は米国株、米国債、米ドルのトリプル安などリスク性資産が全て売られるかもしれません。トランプ氏は米国の不干渉主義を復活させる見込みで、地政学リスクが高まる懸念から金は買い戻される可能性もあります。12月のFOMCでの利上げも見送られるかもしれません。

・金:上昇期待。金コールの買い。
・米国株全般:短期的に急落。ダウプットの買い。
・米国建設・土木関連株:その規模には疑問符がつくものの、トランプ氏も共和党もインフラ改善は重要視しているので上昇期待。下落したところ買い。
・米国軍事関連株:上昇期待。日本や韓国などで米国製装備品の需要が増加する可能性。下落したところで買い。
・石油関連株:ニュートラル。石油企業は共和党の支持母体。
・米国製薬株:下落懸念。共和党も高額医薬品を批判。シナリオ1、2と同様。
・米国金融株:仮にボルカー・ルールの撤廃の動きが出てくると金融株にはプラス。短期的に売られたところでメガバンクのコール買い。
・日本株全体としては円高と米国株安で急落。このシナリオでも日経平均やTOPIXのプットの買い、または、日経平均マイナス3倍トラッカーの買い。

 以上を踏まえると、どのシナリオでも株価が弱含む可能性があるので、米国大統領選挙・議会選挙の前に日経平均やTOPIXのプットの買い、または、日経平均マイナス3倍トラッカーの買いで下落に備えて保険を掛けておくという投資戦略になるかと思います。製薬株も弱含みそうです。その一方でインフラ関連投資や軍事関連株には追い風となるかもしれません。クリントン氏勝利であれば12月のFOMCでは利上げの可能性が意識されるため米ドルのコールの買い、シナリオ3であれば、金のコールの買いと可能性は大きくありませんが金融規制緩和を期待してメガバンクのコールの買いも一手かもしれません。

(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田慎(おのだ まこと)


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