ネットの閲覧履歴が勝手に売買される?「ネットの中立性」規制緩和の動きと注目業種(2017/04/03)

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小野田慎氏のコラム。株式、為替、コモディティ相場のトレンドや、今後想定されるシナリオと投資戦略。eワラントはもちろん、他の金融商品を使った投資戦術などをお届けします。

ネットの閲覧履歴が勝手に売買される?「ネットの中立性」規制緩和の動きと注目業種(2017/04/03)

米国議会は先週、インターネット利用者のプライバシーに関する規制を破棄する法案を可決しました。規制の破棄によりインターネットサービスプロバイダ(以下、「ISP」といいます)は利用者のウェブ閲覧履歴を利用者の同意なく販売することもできるようになるという指摘があります。この動きはオバマ政権下の規制に守られてきたインターネット関連企業にとっては逆風となるかもしれません。一方でISP事業を行っている企業には恩恵がありそうです。

普段あたりまえのように使っているインターネットですが、行き交う情報や利用者が公平に扱われるべきという「ネットの中立性」が規制によって担保されていることにはあまり目が向けられていないでしょう。トランプ政権の規制緩和方針によって現在は「ネットの中立性」が守られていくのかという局面にあり、今後の動向によっては影響を受ける企業が出てくるかもしれません。本稿では「ネットの中立性」をキーワードに、「ネットの中立性」を守ってきたFCCの動向と、影響を受ける可能性がある企業について紹介しています。

■FCCとは?

FCCとは連邦通信委員会(Federal Communications Commission)のことであり、米国内および国家間の電気通信・放送分野における規則制定、行政処分を行う、米国議会の監督下にある政府機関です。FCCは通信料金の審理・設定、通信事業の拡大・縮小・廃業の認可などを所管しており、係争者による主張や反論に対して聴取した上で裁定を下す権限もあります。

オバマ政権下でFCC委員長を務めたトム・ウィーラー氏の退任にともない、FCCは1月23日にトランプ大統領がFCCの委員長にアジット・パイ氏を指名したと発表しました。新しい大統領が選出された場合には委員長が辞任するのが慣例となっています。共和党に属するパイ氏は2012年5月からFCCの委員を務めており、後述する「ネットの中立性」に関してトム・ウィーラー氏と対立していたとされる人物です。

FCCの委員は5人であり、大統領によって指名されますが、5人の委員のうち3人までは同じ政党に所属することができます。トム・ウィラー氏の退任の少し前にジェシカ・ローゼンウォーセル氏も委員を退任していますが、この2人は民主党系です。FCCに残る他の委員としては民主党系のミニョン・クライバーン氏と共和党系のマイケル・オライリー氏がいますが、パイ氏は共和党系なので3人の委員のうち、2人は規制緩和推進派の共和党系という構図になっています。

■「ネットの中立性」とは

FCCの人事に注目する理由はFCCは「ネットの中立性」の番人とも言える役割を担ってきたからです。ネットの中立性とは、インターネットの利用者やインターネット上を行き交うコンテンツなどさまざまなトラフィックについて、ISPや政府は公平に取扱うべき、という考え方です。

FCCによる「ネットの中立性」に関する規制としては、ISPが合法的なウェブサイトやサービスへのアクセスをブロックする行為、通信速度を引き下げる行為、特定のウェブサイトに有償で優遇措置を与えることが規制され、ISPが自社系列のトラフィックを優遇することなども規制されています。

前委員長のトム・ウィーラー氏は「ネットの中立性」について厳格に規制してきたので、通信業者は批判的でしたが消費者団体からは支持を得ていました。今回、規制緩和を是とする共和党所属委員がFCCの多数派となったことで、オバマ政権下で守られてきた「ネットの中立性」は守られなくなるかもしれません。パイ氏をトップとするFCCが通信業者に対する規制を緩和することが考えられるからです。

■投資に活かすなら

3月23日米国議会上院は、ISPはインターネット利用者の位置情報や閲覧履歴のような情報を利用者の同意なしに第三者に提供してはならないとする規制を破棄する法案を可決しました。このように「ネットの中立性」に関する規制緩和について少しずつ動きが出てきました。「ネットの中立性」に関する規制が緩和された場合、インターネットというインフラの上にビジネスが成り立っているインターネット関連企業にとっては逆風となるでしょう。例えば、特定のユーザーをターゲットとするウェブ広告を手掛けている企業にとってはISPが新規参入することで価格競争が生じ、利益率の低下が懸念されます。また、動画配信を手掛けている企業にとっては、ISPの判断でインターネット回線の占有率が高いユーザーは別途課金されるとか、閲覧を制限されるといったことが発生したり、ISPが運営する競合の動画サイトの配信が優先されたりする可能性があるからです。

一方で、ISP事業者にとっては課金できる機会が増えることになり、追い風となるでしょう。ただし、全体で見れば規制が緩くなる分、ISP事業者がコスト負担していた部分がインターネット利用者に転化されることになるので、例えば家計においてインターネット関連支出が増えて他の分野への個人消費の減少につながるかもしれません。

以上を踏まえると、大手ISP事業者であるコムキャスト(CMCSA)、AT&T(T)、タイム・ワーナー(TWX)、ベライゾン(VZ)、センチュリーリンク(CTL)、チャーター・コミュニケーションズ(CHTR)といった株式が強含むことが期待される一方で、インターネット関連企業として、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、フェイスブック(FB)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベット(GOOG)、ネットフリックス(NFLX)の株式は弱含むかもしれません。

なお、サービスプロバイダであるISPは通信回線を保有する事業者とは異なりますが、日米共に通信回線を保有する事業者がISP事業も行っているケースが多く、シェアも大きい傾向があります。

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もしFCCの規制緩和が日本にも波及したら・・・日本のISP事業者にも恩恵があるかもしれません。

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以上のシナリオを前提とすれば大手ISP事業者の株式を買う一方で、eワラントの対象になっているアップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、フェイスブック(FB)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、アルファベット(GOOG)のプット型eワラントを買うという戦略が有効かもしれません。

(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 投資情報室長 小野田慎(おのだ まこと)


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