日銀の政策微修正で銀行株が相対的に優位か

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小野田慎氏のコラム。株式、為替、コモディティ相場のトレンドや、今後想定されるシナリオと投資戦略。eワラントはもちろん、他の金融商品を使った投資戦術などをお届けします。

7月31日、日銀は「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」を発表しました。日銀が金融政策の見直しをするのでは、という事前の観測報道で長期金利の上昇が意識され銀行株の上昇が目立っていましたが、発表された内容は微修正に留まり、TOPIX寄与度の高い銀行株などが売られ、日経平均株価が0.04%高、TOPIXが0.84%安となりました。しかし、これは一時的な反応であって今後は銀行株が相対的に強含むかもしれません。

黒田日銀の金融政策をおさらい
表1に日銀の主な金融政策について変遷をまとめてみました。改めて振り返ってみると、2016年以降は長短金利の操作やETF買いの強化という言わば市場介入を強める形に転換してきており、採用できる量的な拡大路線はもはや限界なのでしょう。今回の金融政策の変更は微調整ではありますが、2019年10月に予定されている消費増税を念頭に量的緩和政策を継続することをコミットした点がポイントと言えるでしょう。

2013年4月

「量的・質的金融緩和政策」の導入を決定。「CPI前年比2%の物価安定の目標」を2年程度の期間で実現

① マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年で2倍に拡大

② マネタリーベースが年間約60~70兆円に相当するペースで増加

③ 長期国債の買入れの平均残存期間を2倍以上に延長(3年弱→7年程度)

④ ETFを年間約1兆円、J-REITを年間約300億円に相当するペースで買い入れ拡大

2014年10月

「量的・質的金融緩和政策」の拡大を決定

① マネタリーベース増加額の拡大(年60~70兆円→年80兆円)

② 長期国債買い入れの拡大(年50兆円→年80兆円)と年限長期化(平均残存期間7~10年へ)

③ ETFを年間約3兆円(3倍増)、J-REITを年間約900億円(3倍増)に相当するペースで買入増。新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に加える

2015年12月

「量的・質的金融緩和政策」を補完するための諸措置の導入を決定

① 長期国債の年限長期化(平均残存期間7~12年へ)

② 新たに年間約3,000億円の枠を設け、「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買入れ

2016年1月

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策」の導入を決定

① 日銀当座預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用

② マネタリーベースの拡大ペースを維持(年80兆円)

③ 長期国債の平均年限を7~12年で維持

2016年7月

金融緩和の強化を決定、次回の会合で「総括的な検証」を予告

① ETF買入額を約2倍へ増加(年3.3兆円→6兆円)

② マネタリーベースの拡大ペースを維持(年80兆円)

2016年9月

「総括的な検証」を公表、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」の導入を決定

① イールドカーブ・コントロール、市場調節により長短金利を操作

短期政策金利の操作目標:▲0.1%、10年物国債利回りの操作目標:概ねゼロ%

② オーバーシュート型コミットメント…消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続

2018年7月

2019年10月に予定されている消費増税を念頭に低い長短金利を維持

① マイナス金利が適用される政策金利残高を現在の水準(平均して10兆円程度)から減少

② イールドカーブ・コントロールの10年物国債利回りの操作目標を概ねゼロ%としつつも上下変動許容

③ ETFとJ-REITの年間買入額に変更は無いが市場の状況に応じて変動。なお、TOPIXに連動するETFの買入拡大

メガバンクの株価を振り返る
図1は直近2年7ヵ月の日経平均株価と大手銀行3行の株価の変化率について、2015年12月末を起点に累積していったものです。左軸は各行の株価と日経平均株価の差を示しています。2018年7月末時点で三菱UFJFG(8306)は0.768なので日経平均株価に対して23.2%パフォーマンスが劣っていたことになります。同様に三井住友FG(8316)は0.814でしたので18.6%、みずほFG(8411)は0.674でしたので32.6%パフォーマンスが劣っていました。右軸は長期金利です。この期間において大手3行の株価は長期金利の動向次第と言えるでしょう。

日銀がマイナス金利の導入を決定した2016年1月29日、日経平均は終値で17,518円30銭(+476円85銭)と上昇しました。しかし、ザラバ中に一時前日比マイナスになるなど日中値幅が800円を越す大荒れの相場展開となりました。東証1部の売買代金は4兆4318億円となり、セクターでは不動産の上昇が目立った反面、銀行は下落しました。その後、2月には10年物国債利回りがマイナス、さらに7月には20年物国債利回りが初のマイナスとなり、銀行株の苦難が始まります。

2016年7月29日の金融政策決定会合で次回9月の会合で「総括的な検証」を行うことが発表され、金融政策の見直しが意識されて長期金利が上昇しました。同日の日経平均株価は小幅反発して16,569円27銭(+92円43銭)となりました。東証1部の売買代金は3兆2967億円となり、銀行、生保、証券株が買われた反面、不動産や鉄鋼などが下落しました。

2016年9月21日のイールドカーブ・コントロール導入が決定され、この発表を受けて日経平均株価は16,807円62銭(+315円47銭)と大幅反発となりました。銀行株も上昇しましたが、その後長期金利のレンジは硬直化し、2017年以降の銀行株は軟調に推移しました。2018年7月下旬に入って日銀の金融政策を見直すという観測報道をきっかけに長期金利が上昇し、銀行株に復調の兆しが出ています。

今後の銀行株の株価は?
今回、現状の超低金利政策を継続することがコミットされたことで、日銀の出口戦略は実質的に封印されたと言えます。しかし、今回の日銀の決定は目標とする長期金利に幅を持たせたことに加え、政策金利残高の見直し、つまり、マイナス金利が適用される部分を減らしたことで、結果的に銀行株に配慮した形となっています。

黒田総裁は記者会見で長期金利の変動幅についてこれまでの倍程度と述べており、長期金利の上限は従前の0.1%から0.2%となる可能性が出てきました。2016年末から2017年初頭に長期金利が0.1%ほど上昇した際、上記の3行の株価は平均で10.5%上昇しており、日経平均株価の7.1%の上昇を上回っています。これを踏まえると、長期金利が0.2%に達するまで銀行株又は銀行株の比率が高いTOPIX買いの日経平均株価売りという投資戦略が検討できるかもしれません。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

* 本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。


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