eワラントとFXを組み合わせたデルタヘッジ戦略の検証

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小野田慎氏のコラム。株式、為替、コモディティ相場のトレンドや、今後想定されるシナリオと投資戦略。eワラントはもちろん、他の金融商品を使った投資戦術などをお届けします。

eワラントの特長は最大損失が買付金額までに限定されていることと、相場が急変した場合には大きな値上がり益を期待できることです。

このeワラントの特長を活かしてFXやCFD、先物取引と組み合わせると相場の方向性ではなく、相場が大きく動くかどうかという変動性を収益の源泉とするデルタヘッジという投資戦略が可能になります。

本稿では英国議会でEU離脱に関する重要な採決が行われた3月12日を例にとり、英ポンド対円相場を対象に英ポンドのプット型eワラントとFXのロングポジションを組み合わせるデルタヘッジの事例を紹介します。

eワラントの価格は曲線になっている

3月12日は英国でEU離脱案の議会採決を控えていましたが、否決によりEU離脱を巡る不確実性が高まると考え、英ポンド相場は議会採決後に下落すると想定していたものとします。

相場下落を予想する場合はプット型eワラントを買いますが、今回は3月12日の日本時間午前9時において、当時の英ポンド対円相場の水準(147.41円前後)よりも権利行使価格が低い(144円)銘柄を選択し、10万円程度購入することにしました。

英ポンド ポンド安(プット)型 372回(2019年3月12日時点)
英ポンド対円相場 147.41円
満期日 2019年5月8日
権利行使価格 144円
デルタ -0.36
1ワラント当たりの原資産数 1
販売価格 2.76円
購入ワラント数 38,000ワラント
購入代金 99,560円

下の図1の横軸は英ポンド対円相場、縦軸はこのプット型eワラントの損益イメージを示しています。

青色の線は2019年3月12日時点で、時間経過を考慮せず、英ポンド対円相場ごとに試算したこのeワラントの価格(点)を結んだものです。

黄色の線は2019年3月12日時点の取引価格を起点に、デルタ-0.36で英ポンド対円相場がいくつ動いたらいくつ上がる、下がるという関係の直線を黄色で加えています。

デルタはeワラントの対象となっている相場(この例では英ポンド対円相場)に対する連動率のことを言い、eワラントの銘柄詳細ページで確認することができます。

(例えば、デルタが1であれば、相場が1円動いたら、相場1単位当たりでこのeワラントの価格は1円動くということになります。)

図1からは、eワラントの損益が曲線になっており、試算時の相場から大きく動いた場合には黄色の線と青色の線が離れて大きなズレが生じることが分かります。

プット型eワラントの価格は相場が大きく下げる場合には加速度的に上昇し、相場が大きく上げる場合には投資元本以上の損失にならないからです。

FXを利用して直線とのズレを収益機会にする

図1で相場が大きく動いたときのズレは黄色の線より上側にあることが分かります。

黄色の線は相場変動のリスクそのものですから、青色の線から相場変動のリスクを取り除けばこのズレを取りに行くことができるかもしれません。

このように相場の大きな変動を想定し、相場の方向性に関わらずズレを狙う戦略をデルタヘッジと言います。

具体的にはコール型eワラントの買いとFXやCFD、先物取引の売り建て、又は、プット型eワラントの買いとFXやCFD、先物取引の買い建てを組み合わせます。

今回は、相場の下落を予想しつつも反対方向に大きく動くことにも警戒して、プット型eワラントを保有するのと同時にFXによって英ポンドを買い建て(ロング)するデルタヘッジを考えました。

戦略のイメージは図2の通りです。

どれだけのポジションをFXで構築すればよいかと言うと、冒頭で紹介したデルタを用いて計算します。

デルタは対象となっている相場に換算するときの指標とも言え、この例の時点でデルタ-0.36でしたので、事例のプット型eワラントの1ワラント当たりでは、-0.36×1(=1ワラント当たりの原資産数)分の英ポンドを保有しているのと同等のリスク量になります。

仮に、例に用いている英ポンドのプット型eワラントを38,000ワラント保有した場合、デルタヘッジを行うには、38,000ワラント×1(=1ワラント当たり原資産数)×-0.36(デルタ)=-13,680となりますので、13,680英ポンドを買い建てすればよいことになります(実際にはFXの取引ルールによって端数分のポジションを持てないことがあります)。

デルタを相殺して相場変動を狙う

図3の青色の線は例に挙げたeワラントをFXでデルタヘッジしてズレを抽出したものです。

ズレの部分は曲線的で、相場の方向性は関係なく、どちらかに大きく動けば利益が狙えることが分かります。

相場が大きく変動して含み益となったら、いったんeワラントもFXもポジションを決済して再度新規のデルタヘッジのポジションを構築するか、又は相場の変動がまだ続くと予想するならeワラントのポジションは変えずに変化したデルタの値に応じてFXのポジションを調整しても良いでしょう。

ただし、リスクもあります。青色の線はポジションを構築した当日であって、時間の経過を考慮していません。

図3の赤色の線は青色の線から他の条件を変えずに時間だけ経過させた場合です。

一般的にeワラントのコール型やプット型は時間経過によって価格が目減りしていくので、相場が変動しない局面では不向きな戦略と言えるでしょう。

デルタヘッジ試算の結果

さて、3月13日の日本時間の午前9時時点で英ポンド相場は離脱案の否決を受けて145.44円となり、保有していた英ポンドのプット型eワラントの損益は+23,560円となりました。

一方でデルタヘッジにより買い建てしていたFXのポジションでは-25,280円の損益となり、トータルで-1,720円となりました。

今回は相場がさほど大きく動かなかったために、損益は小さなものとなりましたが、本稿で紹介したデルタヘッジが効果を発揮するのは相場が大きく動くことが予想されるけれども、方向性は予想するのが難しいという場合です。

なお、本稿の検証ではeワラントの買値と売値の価格差(売買スプレッド)は考慮しておりますが、あくまでも試算結果であり、実際の取引ではFX取引にかかるスプレッド等の手数料やスワップポイントにも注意が必要です。

また、時間の経過や相場変動によってeワラントの価格に用いられるボラティリティなどの前提条件は変化しますし、FX取引においてもスプレッド等の変化などにもご注意ください。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

 


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