天井圏での安定配当株投資の注意点 (2016/08/08)

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土居雅紹のコラム。
株式、為替、コモディティ相場のトレンドや、今後想定されるシナリオと投資戦略。eワラントはもちろん、他の金融商品を使った投資戦術などをお届けします。

天井圏での安定配当株投資の注意点 (2016/08/08)

一本調子の上げ相場が終わり、長期下落トレンドに入りかけているような局面でしばしば言及されるのが“安定配当株”への投資です。そもそも論で言えば、配当は事業の利益から支払われるので、未来永劫安定したビジネスを持っている企業ということになります。とはいえ、経済と金融のグローバル化で世界各国の景気変動の波がシンクロし、その影響も大きくなっている中で“安定配当”が可能な企業はそうありません。

また、半官半民の公益企業や巨大な多国籍企業であっても、競争環境や各種制度が激変し、減配だけでなく株価が大きく下落して戻らないリスクも無視できません。

そこで、配当利回りで選好されることが多い代表的な銘柄として、東京ガス、みずほFG、トヨタの3社について前回のバブル崩壊前に投資を始めたという仮定の下、その後の経過を調べてみました。

■ケース1 配当が着実に増えてきた東京ガス

都市ガス各社は電力や鉄道と並ぶ公益企業で、配当利回りを重視した投資対象とされてきました。図1は、公益企業のなかでも首都圏に立地して強固な経営基盤を持っている東京ガス(9531)の、決算短信公表時における予想年間配当金額とその時点の株価の推移です。東京ガスはサブプライムバブル崩壊後も着実に増配を続け、株価も一時大きく下げましたが2014年には2007年の高値を回復しました。このため、2007年に配当目的で2014年までの7年間投資した場合、毎年好配当を享受した上に、キャピタルゲインも得ることができたことになります。

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しかし、一時は2007年の株価から46%も下落していたので、配当利回りで投資するなら株価が安いときの方が良いのではないか、という素朴な疑問も沸いてきます。図2は同期間の東京ガスの配当利回りを、2007年の株価で計算した場合と、各時点の株価で計算した場合を比べたものです。2007年に配当利回り目的で購入したとすると、購入原価は619円で固定されるので、あとは増配されれば配当利回りは上がり、減配されれば下がることになります。東京ガスは増配続きだったので、当初1.292%だった年率の配当利回りは、現時点では1.777%にまで上昇しています(図中青線)。これはこれで良い数値なのですが、もし2011年10月に株価が337円まで下がった時に、同じく配当利回り目的で投資していれば、配当利回りは2.671%まで跳ね上がっていたことになります。つまり、増配を続けそうな公益企業に配当利回り重視で投資する場合であっても、相場全体の値動きに押されて株価が下落した時に投資を行ったほうが、遥かに良い結果となるといえそうです。

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■ケース2:株価下落と減配のダブルパンチのみずほFG

安心・安全”のイメージで日本を代表する金融機関といえるメガバンク株に、配当利回り目的で投資を考える方も少なくないでしょう。ところが実際のメガバンク株の値動きは荒く、業績変動による減配・増配があるので、安定配当株とはいい難いものがあります。図3は青いメガバンク、みずほFG(8411)の株価と決算短信公表時における予想配当金額の推移です。東京ガスと大きく異なるのは、景気が悪化すると大きく減配され、景気復調とともにやや増配されてきたという点に加え、株価が下がりっぱなしで2014年以降になっても戻りが極めて鈍かったという点です。

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仮に配当利回りが多少良くても株価下落による損失が大きく、また回復の見込みも薄いとなれば安定配当株ではありません。実際、みずほFGの株価低迷は、世界金融危機後の大型増資による株数増加によるものなので構造的です。図4は2007年5月にみずほFGに投資した場合の年率での配当利回りの変化とキャピタルロスの推移です。当初1.245%あった配当利回りが、その後の減配で0.747%まで下がり、一部復配してもまだ0.934%と当初より少ないままです。加えてキャピタルロスが2011年11月にはなんと87.2%にもなり9割近く損失となっていました。直近で戻した2015年5月でさえ、2007年5月から比べると7割超の損失となっていて、継続して増配し株価も戻した東京ガスとはかなり状況が異なっています。

みずほFGの例から得られる教訓は、減配と株価低迷が見込まれる企業、特に大型増資を繰り返し行う企業は配当利回りで購入する対象には適していないということのようです。

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■■ケース3:トヨタのような景気循環株は株価急落による配当利回り上昇期に注意

景気低迷となれば株価が下がるうえに減配となる一方、景気が回復すれば株価が上昇し、増配も行われるのが、典型的な景気循環株です。歴史の長い東証一部上場企業や日経平均の構成銘柄にはこの範疇に入る企業が多く、配当もそこそこ支払われるので安定配当株と考えられがちです。

図5はトヨタ株(7203)に2007年5月に投資した場合のその後の配当利回り(図中黄土色線)、その後のキャピタルゲイン・ロス(図中緑点線)、及び各決算短信公表時における配当利回り(予想配当金/その時点の株価)(図中紫色線)の推移です。景気後退期に減配するので、2007年5月に1.667%あった配当利回りは一時0.556%にまで落ち込みます。しかし、その後過去の水準を上回る増配が行われ、2016年5月には2.917%にまで上昇しています。

なお、景気後退初期には減配よりも株価下落の方が早く進むため、各時点の配当利回りで見ると2008年11月には一時予想配当利回りが3.412%まで上昇しました。2011年11月の株価低迷期にはマイナス65.2%もの評価損となっていましたが、このときの減配幅はさらに大きく2008年の140円/年から2010年の40円/年まで7割以上も下がっていました。

景気循環株だけあって株価は2015年5月に8年前のプラス15%まで上昇しました。しかし、2007年5月にトヨタ株投資していたら、2011年11月には評価損が-65.2%にも達していました。結果的に2015年にはプラスに転じたので期中の評価損は問題が無かったと考えることもできるでしょう。しかしながら、下落トレンドの最中であった黄色の点線で囲まれた時期に、みかけの“好配当利回り”を期待して投資してしまうと、配当利回り低下と多額の評価損によるストレスを抱える時期が3-4年は続く可能性が高いということにもなります。

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■安定配当株への投資に活かすには

“安定配当株”と言われる銘柄であっても、相場全体の株価下落からの影響は避けがたいものがあります。東京ガスのように着実に増配を続けていても株価が大きく下落してからの方がより良い配当利回り投資ができます。

また、金融株に配当利回りの観点から投資するのであれば、株価の下落局面は避け、下落しきってから増資終了後にする必要がありそうです。

さらに景気循環株(耐久消費財、商社、自動車、資本財、化学など)の場合は、いずれ株価が戻ると考える場合であっても、株価の天井圏での配当利回り目当ての投資は避けたほうがよさそうです。

なお、金融株と景気循環株の株価が下落し、予想配当金額が据え置かれているような場合には配当利回りの急騰が観測されることが予想されます。これは経験的に売りシグナルと考えることもできそうなので、これらの株式を対象としたプット買いも一案と考えられます。

(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)


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