<雑感>メキシコ中銀は15会合連続利上げへ、ペソ円には戻り余地あり
- 2023/3/29
- 佐藤りゅうじブログ

明後日、3月30日、メキシコ銀行(中銀)は、金融政策決定会合を開催する予定となっています。市場では、0.25%の利上げが予想されいます。昨年のメキシコペソは、米ドルよりも強く、最強通貨と言ってもいい存在でした。しかし、今月、米地銀発の金融不安を背景に急落する場面があり、主要通貨の中で大きく水準を引き下げた一つとなりました。今回は、メキシコドルが今後のメキシコペソの行方を考えてみます。
・政策金利は過去最高を更新の見込み
メキシコ銀行は、これまで14会合連続の利上げを実施しています。直近の2月9日の会合では、市場予想が0.25%の利上げだったのに対し、低下傾向にあったインフレ率が再び上昇したことを受けて、2会合連続の0.50%の利上げを決定し、政策金利は過去最高の11.00%となりました。今会合では、利上げ幅が前回の0.50%から0.25%に縮小する見込みです。ただ、それでも、政策金利は過去最高を更新し11.25%となります。
・インフレはピークアウトか
国立統計地理情報院(INEGI)が23日発表した3月前半の消費者物価指数は、前年同期比7.12%上昇となりました。2月上旬の7.76%上昇からは減速しています。また、米国の金融不安は、金融機関の貸し渋りを介して、金融引き締めの効果をもたらす可能性があり、インフレはピークアウトすることになりそうです。このため、今回の利上げ幅は、0.25%となり、今後の利上げ余地も限られそうです。
・メキシコへの送金額は過去最高
3月1日、メキシコ銀行が発表した2023年1月の外国からの送金額は、前年比12.5%増の44億600万ドルとなり、1月としては過去最高を更新しました。また、これで前年同月を33カ月連続で上回っています。送金額としては、例年、クリスマスに合わせ、12月の送金額が多くなり、1月は減少する傾向があります。今年も12月に比べ17.6%減少したものの、高い水準を維持しました。
3月10日に発表された2月の米雇用統計をみると、FRBが昨年3月から金融引き締めに動いているにも関わらず、米国の雇用情勢は非常に好調でした。ただ、金融不安が落ち着かなければ、雇用の増加も頭打ちなり、失業率も上昇する可能性があります。金融不安の行方には注意が必要です。
・金融不安の行方次第か
米国発の金融不安は、クレディ・スイス、そして、収益基盤が安定しているドイツ銀行にまで波及しました。市場は過剰に反応しているように見受けられます。市場には、金融不安を背景に米国経済も減速しメキシコの経済成長も減速するとの見方も広がりつつあります。ただ、前述したように、市場はやや過剰に反応しており、金融不安が落ちつけば、再びメキシコペソは買われやすくなるとみます。また、11.00%の超高金利通貨をショートすると、スワップコストが大きくのしかかります。このため、短期的に大きな水準調整があっても、中長期での売りにはなりにくいでしょう。
・テクニカル面からは200日線が支持に
メキシコペソ・円は、昨年10月21日高値7.578円を3月8日に上抜き、7.642円まで上昇後、シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに急落し、20日には6.786円まで下落しました。ただ、その後は徐々に下値を切り上げています。
また、テクニカル的には、200日移動平均線が機能しているようです。昨年12月20日に200日移動平均線を割り込んだ際、200日移動平均線のマイナス2%付近で支持されました。今回の急落場面でも、3月17日に同線を割り込みましたが、21日に再び同線を上回ると、その後は同線が支持になっています。200日移動平均線は、緩やかに上昇を続けています。このため長期の上昇トレンドは継続しており、同線をしっかり割り込むようなことがなければ、長期の上昇トレンドは継続しそうです。
メキシコペソ・円の戻り余地はあり
今日の金融政策決定会合では、15会合連続での利上げが実施されるでしょう。利上げ幅は0.25%となりますが、同国のインフレ率の高さをみると、少なくとも半年程度は高い政策金利が維持される公算が大きそうです。日本とメキシコの金融政策の違い、金利差を考えると、メキシコペソ・円には戻り余地がありそうです。