<雑感>メキシコ利上げ停止か、ペソ円には上値余地あり
- 2023/5/18
- 佐藤りゅうじブログ

今日、5月18日、メキシコ銀行(中銀)は、金融政策決定会合を開催します。メキシコ銀行は、これまで15会合連続の利上げを実施しています。直近の3月30日の会合では、市場の予想通り0.25%の利上げを実施し、政策金利は過去最高の11.25%となっています。しかし、今回の会合では、インフレの鈍化を受けて、政策金利が据え置かれるとの見方が強まっています。利上げ停止の可能性が囁かれる、メキシコペソの状況を見ていきます。
・インフレは鈍化
国立統計地理情報院(INEGI)が9日発表した4月の消費者物価指数は、前年同月比6.25%上昇となりました。3月は同6.85%上昇でしたので、2カ月連続で7%を下回りました。2月の7.62%上昇からは大きく減速しています。6%台のインフレは、依然として高い水準ですが、インフレ率の低下に勢いがあるので、一旦、利上げを停止する可能性が十分にありそうです。ただ、農畜産物とエネルギー価格を除くコアインフレ率は7.67%と、。依然として7%を超えており、仮に利上げが停止しても、利下げの話が出てくるような状況ではないでしょう。
・メキシコへの送金額は過去最高を更新
2日、メキシコ銀行が発表した2023年3月の外国からの送金額は、前年比11%増の51億9400万ドルとなり31月としては過去最高を更新しました。外国からの送金額は、35カ月連続で前年同月を上回っています。送金回数は同11%増の1319万回、一人当たりの送金額は394ドルと前年同月と同額でした。
メキシコ人の主な出稼ぎ先は、米国です。5月5日に発表された4月の米雇用統計をみると、FRBが昨年3月から金融引き締めに動いているにも関わらず、米国の雇用情勢は引き続き好調でした。いまのところ、米国からメキシコへの送金が大きく減少する可能性は低いでしょう。ただ、債務上限や地銀の問題から米国の金融不安が再燃すれば、状況が一転する可能性もあるので、金融不安の行方には注意が必要です。
・メキシコ経済は好調
国立統計地理情報院(INEGI)が4月28日に発表した2023年1-3月期のメキシコのGDPは、前期比1.1%増となりました。メキシコへの送金額が過去最高となるなか、金融・サービス業などの第3次産業が前期比で1.5%増となったうえ、製造業や鉱業などの第2次産業が同0.7%増となりました。また、前年同期比は、3.8%増となっています。INEGIによると、1-3月期の自動車生産台数は92万2177台と、前年同期比で9%増え、特に3月は34万6124台と前年同月比で13%増となっており、コロナ前に水準まで回復しています。GMやテスラのメキシコ工場建設の話もあり、今後もメキシコ主要業である自動車産業は堅調に推移しそうです。
・テクニカル面からは200日線が支持に
メキシコペソ・円は、昨年10月21日高値7.578円を3月8日に上抜き、7.642円まで上昇後、シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに急落し、20日には6.786円まで下落しました。しかし、その後は徐々に地合いを引き締めると、5月1日には3月8日の高値を上抜き、5月17日には7.841円まで上昇し、年初来高値を付けています。
また、テクニカル面から長期的にみると、200日移動平均線が機能しているようです。昨年12月20日に200日移動平均線を割り込んだ際、200日移動平均線のマイナス2%付近で支持されました。今回の急落場面でも、3月17日に同線を割り込みましたが、21日に再び同線を上回ると、その後は同線が支持線になっています。200日移動平均線は、緩やかに上昇を続けています。このため長期の上昇トレンドは継続しており、同線をしっかり割り込むようなことがなければ、長期の上昇トレンドは継続しそうです。
メキシコペソ・円の上値余地はあり
今日の金融政策決定会合では、利上げ停止となる可能性が高そうです。ただ、高インフレ率は維持されており、利下げに動くのはまだ先のことになりそうです。利上げ停止の後に、再度、利上げの可能性もあるでしょう。一方、日銀は植田総裁の発言等をみていると、しばらくYCCにも手を付けないとみられます。日本とメキシコの金融政策の違い、金利差を考えると、メキシコペソ・円には上値余地がありそうです。
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